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香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD8アフレコレポート【その4】

香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD8
アフレコレポート【その4】

【その1】【その2】【その3】【その4】

○梅原裕一郎さん

梅原裕一郎さんはダームエル役とマティアス役です。

「ダームエルは本役だし、アニメでもやったし、いけるだろ?」

音響監督さんの判断によりサンプルボイスはなしで収録開始。
今回はエーレンフェスト防衛戦が入るので、ダームエルも1ワードではなく、ちゃんとセリフがあるんですよ。それにマティアスはゲルラッハの戦いがあるので、セリフ数が多め。
そのため、今回はダームエル(前編)→マティアス(全部)→ダームエル(後編)と、少し変則的な収録の仕方になりました。

「先生、ここ『銀のマント』じゃなくて『銀色のマント』ですよね?」
「確かに銀の素材のマントだと重すぎるな」
「うっ、修正お願いします」

マティアスの収録は以前のサンプルボイスを聞いてから始めました。

「ゲオギ……。ギオ? ギーネ?」
「ゲオルギーネな」
「それから、領主一族はワンワードで」

会話の収録が終わると、皆と合わせる掛け声や叫び声、戦いのシーンのアクションなどを入れていきます。

「○ページ、セリフの後に戦っているアドリブ入れて」
「×ページ、『せーの』に合わせて雄叫びを入れて」

モブ役にもご協力いただきました。
敵の騎士4、北門を襲った騎士は梅原さんです。
聞き分けられる自信のある方、ぜひ挑戦してみてください。

こうして4日目のアフレコが終了……と思ったところで問題が勃発。

「あれ? ギーベ・ゲルラッハの声、決まってなくないですか?」

録音助手さんの声に「え?」となる音響スタッフの皆様。

「ギーベ・ゲルラッハってグラオザムだろ?」
「別キャラの扱いになってますけど」
「え? 別キャラ?」

混乱している音響監督さんやキャスティング担当さん達に、作者である私が飛び入り説明。

「アニメのギーベ・ゲルラッハはグラオザムでしたが、第四部のラストに解任されているので、このドラマCDの時間軸では別の人が新しく任命されてギーベ・ゲルラッハになってます」
「マジで!?」

ギーベ・ゲルラッハは役職名なので、交代したら別の人になるんですよね。書籍には載っていますが、さすがにそんな細かい部分はドラマCDで語られていないし、新ギーベには名前がついていないので、キャスティングのために台本をパッと見ただけだと同じキャラだと思われても仕方ありません。

本編を読み込んでいる原作チームは当たり前に別キャラだと思っていて、台本だけを確認する音響スタッフ達にはわかりにくい形になっていたようです。キャラ名を「ギーベ・ゲルラッハ」ではなく「新ギーベ」にしておけば、こういう間違いを防げたかもしれません。申し訳ない。

「次の収録に来る人に急遽頼むしかないですね」
「先生、ギーベ・ゲルラッハって何歳? 男?」
「男ですね。明確なキャラ描写はしていないので40~50代くらいならOKです」

あまり年齢を限定してしまうと、すでに演じているキャラと声が被る可能性もあるので幅を持たせておきます。

「次回の収録って誰がいる?」
「井上さん、関さん、小林さん、子安さん、森川さんです」
「……年齢的に誰でもいけそうだな」
「そうですね。誰にお願いしてもサラッと演じてくれそうです。ギーベ・ゲルラッハとジルヴェスターのやりとりがあるので井上さんは止めた方が良いですけど」

何とかリカバリーができそうでホッとする一同。

そんな裏事情と共に始まった5日目。最終日のアフレコは井上和彦さん、関俊彦さん、小林祐介さん、子安武人さん、森川智之さんです。

○井上和彦さん

井上和彦さんはジルヴェスター役です。
サンプルボイスを確認することなく収録開始です。

「井上さん、そこ『ダームウェル』じゃなくて『ダームエル』な」
「あれ、違いました?」
「あと『フェルナンド』って言った。『フェルディナンド』で」
「あ、すみません」

読みにくいカタカナの数々、申し訳ないです。

「○ページ、フェルディナンドで一回きっちり切らないと、繋がったら三人が捕まったみたいに聞こえます」
「×ページ、灰色巫女はワンワードで。灰色『の』巫女じゃないです」

細かい修正だけで、特に問題なく進んでいく収録。
そして、最後の戦い。

「うーん、ちょっと淡々としすぎじゃないですか?」
「最後の戦いで山場なので、ここはもうちょっと盛り上げてください。ジルヴェスターの感情を強く出してほしいです」
「でも、ゲオルギーネはそこまで感情が強くなかったですよね? ジルヴェスターのテンションが高くなると噛み合わないのでは?」
「ゲオルギーネは冷たく切り捨てる感じが欲しいので、あれで良いんです」
「ジルヴェスターは段々テンションの上がっていく感じが欲しいですよね?」

意見のやり取りに熱が籠もるのも、やはり山場だから。
二、三回やり直していただいてジルヴェスターとゲオルギーネの戦いが仕上がりました。

ジルヴェスター役が終わると、モブ役にもご協力いただきます。
敵の騎士4、神殿の騎士5が井上さんです。
お楽しみに。

○関俊彦さん、小林裕介さん

関俊彦さんはハイスヒッツェ役で、小林裕介さんはエックハルト役です。

「エックハルト、相変わらず『はっ!』しかないな。セリフが少ない」
フェルディナンドの背後には大体いるけれど、あまりお喋りしないキャラなので、エックハルトはドラマCDになるとちょっと不利ですね。
でも、今回ユストクスは出番さえなかったので、それに比べたらマシかもしれません。

「○ページのハイスヒッツェ、嬉しそう過ぎません?」
「確かにラストはもうちょっとシリアスさが欲しいですね。魔石になるって死ぬことなので」

少し修正するだけでセリフの収録は終わり。
セリフより戦っている時のアクションや叫び声の方が多いかもしれません。

その後はモブ役にもご協力いただきました。
関俊彦さんが敵の騎士5、神殿の騎士4
小林裕介さんが敵の騎士3、神殿の騎士3、ハンネローレの護衛騎士2
こうして書き出していくと、敵の騎士や神殿の騎士にはめちゃくちゃ豪華声優さんの名前が並んでいました。(笑)

○子安武人さん

子安武人さんはベンノ役です。
アニメの収録があったので、特にサンプルボイスを確認することもなく収録が始まります。

「○ページ、前半は図書館に感動している感じで、後半は従業員に説明している感じを出してください」

ベンノの収録はサクッと終わりました。エーレンフェスト防衛戦でローゼマインの図書館に避難していた時のセリフしかないので。
それから、前回発覚した新ギーベ・ゲルラッハ役を子安さんにお願いすることになりました。

「急なお願いで申し訳ないけど、ギーベ・ゲルラッハのセリフもお願いしていいかな?」
「いいですよ」

台本のページとキャラの年齢などを伝え、声のテストです。

「先生、どう?」
「良いと思います」

ギーベ・ゲルラッハ役を快く引き受けてくださった子安さんに感謝します。
ありがとうございました。

○森川智之さん

森川智之さんはカルステッド役とボニファティウス役です。今回は本役のカルステッドよりボニファティウスの方がセリフは圧倒的に多いです。

急ぎ足でスタジオに入っていった森川さん。
音響監督さんが本日の流れを説明します。

「……という流れで録っていくから。あれ? 息上がってる? 急いで来すぎた? ちょっと休憩挟む?」
「いえ、筆箱の中でシャーペンの芯が飛び出してて……ちょっと慌てただけなので大丈夫です」

シャーペンの芯は折れやすいし、細いので摘まみにくいし、指も筆箱の中も黒く汚れるし、筆箱の中で散らばると大変だよね。
フフッと和んだコントロールルームの空気と違い、急いで片付ける森川さん。

ボニファティウスのサンプルボイスを確認した後、収録が始まりました。

「其方は『そなた』でお願いします」
「○ページ、もうちょっと飛び込んできた勢いが欲しいですね。走り込んできてババーンと登場するみたいに」
「×ページ、脱字です。『ならない』に修正してください」
「△ページ、『これほどの』の『の』が飛ばなかった?」

細かい修正をして収録は終わります。
ボニファティウスのお茶目さと、ちょっと周囲に迷惑な感じと、領主一族らしい威厳が感じられて良かったです。

カルステッドとボニファティウスの収録が終わると、モブ役にもご協力いただきました。
敵の騎士6、神殿の騎士6です。
モブ役の聞き分け、ぜひ楽しんでみてください。

これでアフレコの全日程が終了です。
二枚組はやはりとても時間がかかりますね。大変でした。
こういうアフレコ中の休憩時間に時々出てくる音響さん達の会話が面白くて、私、結構好きなんですよね。
今回は昔話が楽しかったです。

「こういう個別収録、大変は大変だけど、昔よりマシ。昔はアフレコとダビングが別日だったからな」
「収録の仕方、6ミリ時代とCD時代じゃ全然違いましたよね?」

……6ミリ時代っていつ? 
もちろん私はカセットテープも知っている世代ですけれどね。中学時代にはCDを聞いていたので、いつ頃の話なのかなって。

「テープの頃はノイズが入ったって指摘しにくかった」
「録り直し、大変ですからね(笑)」
「そうそう。テープだとシャーシャー音が入ることもあったけど、昔はそれでもよしだった。それをダメにしたら仕上がらなかったからな」
「効果音もSEで入れるんじゃなくて、効果さんがスタジオに来て、音を出してましたよね。懐かしい」

……え? むしろ、効果さんが音を出す現場を見てみたいんですけど。

「今みたいなデジタル時代じゃなかったら今日みたいに個々に録って合わせるなんて収録は無理だったな。気が狂う」
「せめてマルチがないと、無理ですよ」

音響さん達の会話を聞いていると、コロナ禍でも個別収録できて、ドラマCDが完成する現在の素晴らしさに感動しますね。
そのうちマスクしたままでも収録できるように進歩したらいいな。
デジタル時代、万歳!

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