2022年8月10日発売!
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香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD8アフレコレポート【その1】

香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD8
アフレコレポート【その1】

【その1】【その2】【その3】【その4】

2022年某日、ドラマCD8のアフレコが行われました。
第五部Ⅷ、第五部Ⅸと連続である上に、どちらも二枚組です。企画した時には担当さんに驚かれました。

「え? 連続でドラマCDを作るんですか?」
「ゲルラッハの戦いとエーレンフェスト防衛戦にも声が欲しいんですよ。ドラマCD7はフェルディナンドの救出をメインにするので、ゲルラッハの戦いは入らないじゃないですか。エーレンフェストに残っている面々も同時期に奮闘しているわけですし、ここは欲しいなって思うファンは多いと思いますよ」

それに、原作ではこの先ディートリンデやレオンツィオを追いかけてローゼマイン達が移動するので舞台が移ってしまいます。それを考えると、エーレンフェストに残っている面々の活躍をドラマCDにできる機会はこれが最後。

「うーん、今からだったら事前に決めて準備をすれば作ることは可能ですが、香月さんの負担がすごいですよ。二巻連続でおまけSSやアフレコレポートが増えるんですから。体調不良などでスケジュールがズレた場合、アフレコレポートは外せても、おまけSSは外せません。書き下ろしの量、大丈夫ですか?」
「……それだけなら何とかなるけど、もう一つ考えている方を合わせると微妙、かも?」

私がスケジュールを考え込む前で、不安そうな顔になる担当さん。

「ちょっと待ってください。何か怖い。嫌な予感がしてきましたよ」
「私、できればエーレンフェスト防衛戦を書き下ろしたいんですよね」
「えぇ!? エーレンフェスト防衛戦に、ドラマCDのおまけSSやアフレコレポートもやるんですか? 本当に大丈夫ですか!?」

結論から言うと、無理でした。
ドラマCDの脚本のために書き下ろすはずだったエーレンフェスト防衛戦は体調不良で完成時期がずれてしまい、脚本に反映できなくなったんですよね。書籍には間に合ったけれど、ドラマCDの脚本作成時期には間に合わず、非常に無念でした。ぐぬぬぬ……。
プロットの形にもなっていない細切れのセリフを上手く取り入れてくださった脚本の國澤さんにはマジ感謝しています。

そんな無謀な計画から始まったドラマCD8。
アフレコは今回も完全にリモート参加です。私は家の書斎でiPadと睨めっこ状態。
今回も二枚組のため、とても時間がかかりました。5日にわたる収録。スタッフの皆様、お疲れ様でした。

アフレコ1日目は速水奨さん、折笠富美子さん、三瓶由布子さん、堀内賢雄さん、山下誠一郎さん、遠藤広之さん、日野まりさん、衣川里佳さん、岡井カツノリさん、渡井奏斗さん、廣瀬武央さん、狩野翔さん、島田高虎さん、千葉航平さんです。
多いですね。当然、収録の時間も一番長かったです。

○速水奨さん

速水奨さんはフェルディナンド役です。
相変わらずセリフ数が多いですが、前回の半分くらいなので、まだ少なめと言えるのではないでしょうか。

サンプルボイスを聞く必要もないので、最初からどんどんと収録していきます。

「○ページの『黙らせろ、エックハルト』はもっと強くしてください」
「×ページ、『ゲルオギーネ』って聞こえましたけど……」
「△ページ、『ハウスヒッツェ』って言っていませんでした?」
「○ページ、大勢に向けて言うので、もう少し声を張ってください」

細かい修正はあったものの、サクッと前編の収録が終わりました。

「じゃあ、次は後編ね」
「え?」
「え?……って、どうした?」
「今日の内に後編も収録するんですか? 後編の台本、家に置いて来ちゃいました」

前回は前編と後編は別の日に収録したので、どうやら今回も別に収録すると思っていたようです。二枚組の弊害ですね。
スタッフさんに後編の台本を借りて後編の収録です。

「今から台本をチェックする時間を取りましょうか?」
「さすがに読んでいるので、そんなに時間はかからないです」

本人の宣言通り、サクッと終わりました。

収録を終えたら写真を撮影し、色紙にサインをして終わりです。

○折笠富美子さん

折笠富美子さんはエーファ役です。
アニメの収録があったので、特にサンプルボイスはありませんでした。
エーファはアニメより年嵩になっているイメージの声になっているので、そのまま進めていきます。

「先生、○ページって『せいもん』じゃなくて『にしもん』だよね?」
「え? あ、はい。『きたもん』『ひがしもん』『みなみもん』『にしもん』です」

……そうか。「せいもん」とも読むね。

あまり自分の意識になかったせいで、音響監督さんからの確認にちょっと驚きました。

「×ページ、ダームエルは一応貴族なのでもうちょっと躊躇いをお願いします」

戦いが近付く中、夫の心配をしてダームエルにお守りを託すシーンは最高ですね。
思い詰めたエーファの気持ちがとても伝わってきます。

○三瓶由布子さん

三瓶由布子さんはゲオルギーネ役です。
今回はゲオルギーネが結構喋るんですよ。今まで二言くらいしかなかったので、新鮮です。

「すみません。○ページのナレーション、大幅な変更が必要です」
「え?」
「水路から出たら神殿の敷地内にある孤児院男子棟の側に到着しているはずなのに、水路を出た後で『やがて神殿が見えてきました』になっています」
「あ、本当ですね。まずいな」

気付いて良かった。
どう変更するのがわかりやすいか、なるべく最小限の変更で前後が繋がるように皆が意見を出しつつ修正しました。

「あと、ここのセリフですけれど、前半をナレーションにした方が良いかもしれません。説明が先行して、後半と噛み合っていない気がします」
「確かに、一旦切って後半だけを感情を込めたセリフにする方が良いかもしれませんね」
「先生、○ページ『わたし』になっています。ゲオルギーネなので『わたくし』ですよね?」

いくつも修正をしつつ収録は進んでいきます。
自分の盛った毒でジルヴェスターが苦しむシーンのゲオルギーネが印象的でした。

「ちょっと怖すぎますね。そこは恨みがましいとかドロドロした感じではなく、もっと彼女自身が喜んでいる感じが欲しいです。愉悦って感じ」
「恍惚とした雰囲気を出してください」

苦しむジルヴェスターを見て最高に喜ぶゲオルギーネになりました。

○堀内賢雄さん

堀内賢雄さんはグラオザム役です。
アニメでもグラオザム(アニメではゲルラッハ子爵)として参加してくださっています。

「あ、このドラマCDではアニメの時より6~7歳くらい年齢を上げてください」

すでに収録済みだったアニメより年齢を上げてもらってドラマCDの収録をしました。

「○ページ、フッという笑いを先に入れてください」
「×ページ、領主一族はワンワードでお願いします。それから、他領の発音が他の方と違いました」
「△ページ、怒りはあるけれど、もっと静かに。だんだん語気が強くなっていく感じが欲しいです」

堀内さんが苦戦したのは「ボニファティウス」でした。なかなか言えなくて「ぐぬぅっ」となっていたのが可愛かったです。あとは音響監督さんとの会話も……。

「○ページは『へいみん』な。今『へいせい』って言ったよ」
「本当ですか? 言ってませんよ」
「言ったよ。聞かせようか?(笑)」
「いや、いいです」

2人の掛け合いがお茶目で、コントロールルームでは笑いが漏れていました。
こんなやり取りをしていても、内容はシリアスなんですよ。
マティアスとの親子対決、お楽しみに。

○山下誠一郎さん、遠藤広之さん

山下誠一郎さんはコルネリウス役、遠藤広之さんはローデリヒ役です。お二人はそれ以外にも敵や兵士や騎士など、いくつものモブを担当してくださいました。

まずはコルネリウスとローデリヒのサンプルボイスを聞いてから収録を始めます。

「コルネリウス、アウブ・アーレンスバッハの発音が少し違いません?」
「すみません。○ページ、『ローゼマイン様』の『様』を取ってください」
「×ページのコルネリウス、もっと力強さというか、キレ気味にお願いします」
「△ページ、『フェルディナンド様』が『ヘルディナンド様』に聞こえました」
「すみません。○ページ、『レッサーバスに』を『レッサーバスが』に修正お願いします」
「×ページ、修正させてください。ジョイソタークは人名ではなく地名なので、『彼』に。それから、シャルロッテに敬称を追加、『シャルロッテ様』にしてください」

コルネリウスは戦いに同行しているのでセリフが多いのですが、ローデリヒは祝勝会のシーンに出てくるだけなので出番は少ないです。こういう時に書き下ろしが完成していたら出番が増えたのに、と思ってしまうんですよね。個人的には戦った人達に話を聞いて回るローデリヒ、結構お気に入り。

会話を収録した後で、戦いのアクションや掛け声、雄叫びなどを収録していきました。

「○ページの雄叫び、二人が最初だから頭に『せーの』って入れてくれる?」
「わかりました」

戦いの場での雄叫びや叫び声は山下さんが最初になるので、音頭を取って収録していきます。騎士達の声には遠藤さんも参加してくださっています。私は脚本を見ながら、このキャラの声は必要だと思うのをピックアップしていきます。

「○ページの雄叫びはアンゲリカとレオノーレも収録してください。×ページはハンネローレもお願いします。周囲にいるので」
「了解」

各種様々な叫び声をいただいた後、戦いの中のモブをお願いしました。
山下誠一郎さんは敵の騎士2、神殿の騎士2、ハンネローレの護衛騎士。
遠藤広之さんは兵士7、アーレンスバッハの貴族2、下町指揮官、団長の部下、クラペッヒの側仕え。
モブに潜む声優さんの聞き分けができるかたはどれだけ聞き分けられるんでしょうね? ちなみに、私はさっぱりです。

モブの中で印象深かったのは、遠藤さんが担当してくださったアーレンスバッハの貴族2でしょうか。ハルトムート達の指導を受けてローゼマインを崇拝するようになった貴族です。

「ちょっと心酔しすぎ? もうちょっと普通で良いのでは?」
「ハルトムートが入ってますね。アーレンスバッハの貴族が三人ともこの調子では気持ち悪いです」

そんな収録の中、録音助手さんからの指摘が入りました。

「あ、×ページ。収録漏れです」
「え? どこだ?」

皆が一斉に台本を捲っていきます。

「側近達の内訳にローデリヒさんがいるので……」
「あ!……これは見落とすな」

セリフの上が「側近」などで、個別の名前がないと忘れられがちです。細かいところに気付く録音助手さん、すごいです。

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