2025年某日、『本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生』ドラマCD3のアフレコがありました。
ドラマCDは小説に沿った脚本になるため、まず私がプロローグ、エピローグ、書き下ろし短編などの書籍の原稿を書いて、脚本の國澤さんに渡さなければなりません。そのため、小説の原稿をかなり早めに上げる必要があります。それに合わせてリクエストを募集したり、時によってはアンケートを採ったり、読者の方々にも早くからご協力いただくことになるわけです。
今回のドラマCDのおまけSSはルイポルト視点になりました。 主の動向に振り回され、ハンネローレの側近として腹を括ったことでググッと存在感を増した文官見習いの五年生です。 彼の事情を短編にしてみました。お楽しみに。
○1日目
いつも通り、私と鈴華さんはリモート参加です。 私はPCのあるデスクにiPadを準備してアフレコに参加します。
「香月さん、鈴華さん。おはようございます」 「おはようございます」 「今日は國澤さんと石山さんがスタジオにいらっしゃいます。ご挨拶、いいですか?」
國澤真理子さんはドラマCDから始まり、アニメでも構成や脚本でずっとお世話になっている方です。アニメの作業が始まると、さすがに國澤さんだけで全ての脚本を担当することは難しいため、他の方にもご協力いただいています。その内の一人が石山優子さんで、今回のドラマCDでも脚本にご協力くださいました。
顔も見えないけれど、「お久し振りです」「よろしくお願いします」と挨拶を交わします。アフレコにリモート参加できるのは少々体調が悪くても問題ないという意味で非常に便利ですが、関係者と上手く顔を合わせられないのが困りもの。私の脳味噌は画面越しに挨拶だけをしても、あまり記憶に残してくれないんですよね。
コロナ禍以降はリモート参加になったため、「ハンネローレ」のキャストさんは顔のわからない方が圧倒的に多いです。体調が安定したら一度くらいはスタジオに行きたいものです。 スタジオに行くと、ちょっとした休憩時間の会話が結構重要な打ち合わせになったり、アフレコレポのネタになったりするので結構楽しいんですよ。
そんなこんなでアフレコ開始です。1日目の初回には大勢が集まりました。 ハンネローレ役の諸星すみれさん、フェルディナンド役の速水奨さん、アナスタージウス役の大塚剛央さん、シャルロッテ役の本渡楓さん、レティーツィア役の長縄まりあさん、ハイルリーゼ役の夏吉ゆうこさん、アンドレア役とツェントの文官役の井澤美香子さん、ルイポルト役の遠藤広之さん、エルーシア役の大木咲絵子さん、ウルツドルフ役と上級貴族役の岡井カツノリさん。 少人数の収録から完全に脱したのを感じますね。
この初回では前編をメインに収録していきます。 ハンネローレ役の諸星すみれさんなんて前編で195ワード、後編で173ワードと喋りっぱなしのため、前編と後編で日を分けて収録するのです。
アフレコ前にアンドレア役の井澤美香子さんから質問がありました。
「○ページ、ケントリプスに様が付いているのといないのがあるのですが……」 「すみません。様をつけてください」 「ハイルリーゼは?」 「ハイルリーゼもルイポルトも、コルドゥラ以外のハンネローレの側近はケントリプスとラザンタルクに様付けでお願いします」
書籍は校正作業の中で修正したのですが、ドラマCDの脚本は校正作業より先にできているので見逃したんですよね。 アフレコに来ている脚本家の方々も含め、皆で側近達のセリフを探して「様」が抜けていないか必死で確認。私もPCで検索をかけていきます。
「×ページに様抜けがあります」 「修正してください」 「△ページの様抜けは?」 「そっちはコルドゥラのセリフなので大丈夫です」
脚本の修正を終えたらアフレコ開始。 慣れた面々なのでハンネローレ役の諸星すみれさんに2つくらいのセリフを言ってもらって音量などに問題がないか確認します。
「側近達、新しいキャラだから声を確認しておこうか」
ルイポルト、エルーシア、ウルツドルフにセリフを喋ってもらってテストします。
「先生、どうですか?」 「うーん、ルイポルトとウルツドルフが逆、かな?」 「え? 声が完全に逆ってこと?」 「いえ、演技が。ルイポルトは文官らしくもっと冷静にしてほしいです。今は感情的すぎるというかテンションが高すぎるんですよね。あと、少し嫌味っぽさが欲しいです。ウルツドルフは騎士としてもうちょっと前のめりになってもいいかな?」
少し調整したら早々に本番開始です。 今日はコルドゥラもケントリプスもいないので、ハンネローレ一人で喋るプロローグ。タイトルコールが終わってもまだしばらくハンネローレ一人だけ。
「○ページ、脚本のミスです。『項』ではなく『頭』。『こうべ』と読んでください」 「あぁ、頭を垂れる」 「△ページ、喧々囂々に修正してください。校正さんに指摘を受けて書籍を修正しています」 「×ページ、『捕獲』を『確保』に修正してください。校正さんに指摘を受けました」 「○ページ、『洗礼前』を『洗礼式前』に修正してください」
脚本のミスを修正していただいたり、
「×ページ、『内々』は『うちうち』じゃないですか?」 「どっちでも問題ないけど……『うちうち』かな?」 「○ページの『早急』は『さっきゅう』ですか?『そうきゅう』ですか?」 「それは『そうきゅう』でお願いします」 「すみません。『自領』の読み方が前回までと違いません?」 「じゃあ、修正で」
読み方の確認で以前のものと合わせていただいたり……。 それに加えて、演技のイメージが違うところやノイズの入ったところなども撮り直していきます。
「うーん、ルイポルトはもっと貴族らしさと文官らしさを意識してほしいです。感情的すぎるんですよね」 「あぁ、脚本の『!』を意識しすぎているかもしれませんね。△ページの『!』はないくらいのイメージで演じてもらいますか?」 「じゃあ、その方向で」
撮り直しが終わったら、側近達の揃った返事やざわめきなどを収録して次に進みます。
「アナスタージウス、前のサンプルを出します」 「ありがとうございます」
以前の声を確認したら、アナスタージウス役の大塚さんから質問が。
「○ページ、『~願いのために~願うのか』で一文に願いが二回入りますが、大丈夫ですか?」 「うーん、めちゃくちゃ悩ましいですが、校正さんから特に指摘されなかったので、このままでいきます」 「わかりました」
確認事項が終わったら収録開始です。
「○ページのハンネローレ、ここはキリッとした感じで」 「×ページのハンネローレ、ケントリプスに向けて言う感じで、最後をもっと可愛くしてほしいです」 「△ページの幼いハンネローレ。脚本に指示はないですが、前のセリフから続けて泣き声で」 「○ページのアンドレア。からかう感じではなく、見守る感じにしてください。保護者っぽいというか、年上のお姉さん感が欲しいです」
ノイズなどを含めて次々と修正していきます。
「ハンネローレは喋りっぱなしだからな。一旦休憩する?」
音響監督さんの確認に、諸星さんは「あ、大丈夫です」と明るくお返事。休憩なしで先に進むことになりました。
「先生、どうですか?」 「うーん、全体的にレティーツィアの声が幼いです。前回の、ドラマCD2より幼くなっていません?」 「前回どんな声だっけ?」 「ちょっと待ってください」
音響監督さんの声にドラマCD2の声を探し始める録音助手さん。
「ドラマCD2のサンプルボイスの確認ってできます? えーと……キャプチャー2 01:53~02:32です」
PCで検索してサンプルボイスを指定したメールを見直し、録音助手さんにデータを探していただきます。
「そこです、レティーツィア!」 「……うーん、確かに前より幼く聞こえるな」
声を調整していただいてレティーツィアの分を収録し直しました。
「他に気になるところは?」
「○ページのレティーツィア。『おうめい』が『おうけん』に聞こえました」 「×ページのハンネローレ。『いい』ではなく『よい』に脚本を修正してください」
細かい部分を修正したら前編のエピローグです。
香月美夜「本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生」ドラマCD3
アフレコレポート【その1】
香月美夜「本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生」ドラマCD3
アフレコレポート【その1】
2025年某日、『本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生』ドラマCD3のアフレコがありました。
ドラマCDは小説に沿った脚本になるため、まず私がプロローグ、エピローグ、書き下ろし短編などの書籍の原稿を書いて、脚本の國澤さんに渡さなければなりません。そのため、小説の原稿をかなり早めに上げる必要があります。それに合わせてリクエストを募集したり、時によってはアンケートを採ったり、読者の方々にも早くからご協力いただくことになるわけです。
今回のドラマCDのおまけSSはルイポルト視点になりました。
主の動向に振り回され、ハンネローレの側近として腹を括ったことでググッと存在感を増した文官見習いの五年生です。
彼の事情を短編にしてみました。お楽しみに。
○1日目
いつも通り、私と鈴華さんはリモート参加です。
私はPCのあるデスクにiPadを準備してアフレコに参加します。
「香月さん、鈴華さん。おはようございます」
「おはようございます」
「今日は國澤さんと石山さんがスタジオにいらっしゃいます。ご挨拶、いいですか?」
國澤真理子さんはドラマCDから始まり、アニメでも構成や脚本でずっとお世話になっている方です。アニメの作業が始まると、さすがに國澤さんだけで全ての脚本を担当することは難しいため、他の方にもご協力いただいています。その内の一人が石山優子さんで、今回のドラマCDでも脚本にご協力くださいました。
顔も見えないけれど、「お久し振りです」「よろしくお願いします」と挨拶を交わします。アフレコにリモート参加できるのは少々体調が悪くても問題ないという意味で非常に便利ですが、関係者と上手く顔を合わせられないのが困りもの。私の脳味噌は画面越しに挨拶だけをしても、あまり記憶に残してくれないんですよね。
コロナ禍以降はリモート参加になったため、「ハンネローレ」のキャストさんは顔のわからない方が圧倒的に多いです。体調が安定したら一度くらいはスタジオに行きたいものです。
スタジオに行くと、ちょっとした休憩時間の会話が結構重要な打ち合わせになったり、アフレコレポのネタになったりするので結構楽しいんですよ。
そんなこんなでアフレコ開始です。1日目の初回には大勢が集まりました。
ハンネローレ役の諸星すみれさん、フェルディナンド役の速水奨さん、アナスタージウス役の大塚剛央さん、シャルロッテ役の本渡楓さん、レティーツィア役の長縄まりあさん、ハイルリーゼ役の夏吉ゆうこさん、アンドレア役とツェントの文官役の井澤美香子さん、ルイポルト役の遠藤広之さん、エルーシア役の大木咲絵子さん、ウルツドルフ役と上級貴族役の岡井カツノリさん。
少人数の収録から完全に脱したのを感じますね。
この初回では前編をメインに収録していきます。
ハンネローレ役の諸星すみれさんなんて前編で195ワード、後編で173ワードと喋りっぱなしのため、前編と後編で日を分けて収録するのです。
アフレコ前にアンドレア役の井澤美香子さんから質問がありました。
「○ページ、ケントリプスに様が付いているのといないのがあるのですが……」
「すみません。様をつけてください」
「ハイルリーゼは?」
「ハイルリーゼもルイポルトも、コルドゥラ以外のハンネローレの側近はケントリプスとラザンタルクに様付けでお願いします」
書籍は校正作業の中で修正したのですが、ドラマCDの脚本は校正作業より先にできているので見逃したんですよね。
アフレコに来ている脚本家の方々も含め、皆で側近達のセリフを探して「様」が抜けていないか必死で確認。私もPCで検索をかけていきます。
「×ページに様抜けがあります」
「修正してください」
「△ページの様抜けは?」
「そっちはコルドゥラのセリフなので大丈夫です」
脚本の修正を終えたらアフレコ開始。
慣れた面々なのでハンネローレ役の諸星すみれさんに2つくらいのセリフを言ってもらって音量などに問題がないか確認します。
「側近達、新しいキャラだから声を確認しておこうか」
ルイポルト、エルーシア、ウルツドルフにセリフを喋ってもらってテストします。
「先生、どうですか?」
「うーん、ルイポルトとウルツドルフが逆、かな?」
「え? 声が完全に逆ってこと?」
「いえ、演技が。ルイポルトは文官らしくもっと冷静にしてほしいです。今は感情的すぎるというかテンションが高すぎるんですよね。あと、少し嫌味っぽさが欲しいです。ウルツドルフは騎士としてもうちょっと前のめりになってもいいかな?」
少し調整したら早々に本番開始です。
今日はコルドゥラもケントリプスもいないので、ハンネローレ一人で喋るプロローグ。タイトルコールが終わってもまだしばらくハンネローレ一人だけ。
「○ページ、脚本のミスです。『項』ではなく『頭』。『こうべ』と読んでください」
「あぁ、頭を垂れる」
「△ページ、喧々囂々に修正してください。校正さんに指摘を受けて書籍を修正しています」
「×ページ、『捕獲』を『確保』に修正してください。校正さんに指摘を受けました」
「○ページ、『洗礼前』を『洗礼式前』に修正してください」
脚本のミスを修正していただいたり、
「×ページ、『内々』は『うちうち』じゃないですか?」
「どっちでも問題ないけど……『うちうち』かな?」
「○ページの『早急』は『さっきゅう』ですか?『そうきゅう』ですか?」
「それは『そうきゅう』でお願いします」
「すみません。『自領』の読み方が前回までと違いません?」
「じゃあ、修正で」
読み方の確認で以前のものと合わせていただいたり……。
それに加えて、演技のイメージが違うところやノイズの入ったところなども撮り直していきます。
「うーん、ルイポルトはもっと貴族らしさと文官らしさを意識してほしいです。感情的すぎるんですよね」
「あぁ、脚本の『!』を意識しすぎているかもしれませんね。△ページの『!』はないくらいのイメージで演じてもらいますか?」
「じゃあ、その方向で」
撮り直しが終わったら、側近達の揃った返事やざわめきなどを収録して次に進みます。
「アナスタージウス、前のサンプルを出します」
「ありがとうございます」
以前の声を確認したら、アナスタージウス役の大塚さんから質問が。
「○ページ、『~願いのために~願うのか』で一文に願いが二回入りますが、大丈夫ですか?」
「うーん、めちゃくちゃ悩ましいですが、校正さんから特に指摘されなかったので、このままでいきます」
「わかりました」
確認事項が終わったら収録開始です。
「○ページのハンネローレ、ここはキリッとした感じで」
「×ページのハンネローレ、ケントリプスに向けて言う感じで、最後をもっと可愛くしてほしいです」
「△ページの幼いハンネローレ。脚本に指示はないですが、前のセリフから続けて泣き声で」
「○ページのアンドレア。からかう感じではなく、見守る感じにしてください。保護者っぽいというか、年上のお姉さん感が欲しいです」
ノイズなどを含めて次々と修正していきます。
「ハンネローレは喋りっぱなしだからな。一旦休憩する?」
音響監督さんの確認に、諸星さんは「あ、大丈夫です」と明るくお返事。休憩なしで先に進むことになりました。
「先生、どうですか?」
「うーん、全体的にレティーツィアの声が幼いです。前回の、ドラマCD2より幼くなっていません?」
「前回どんな声だっけ?」
「ちょっと待ってください」
音響監督さんの声にドラマCD2の声を探し始める録音助手さん。
「ドラマCD2のサンプルボイスの確認ってできます? えーと……キャプチャー2 01:53~02:32です」
PCで検索してサンプルボイスを指定したメールを見直し、録音助手さんにデータを探していただきます。
「そこです、レティーツィア!」
「……うーん、確かに前より幼く聞こえるな」
声を調整していただいてレティーツィアの分を収録し直しました。
「他に気になるところは?」
「○ページのレティーツィア。『おうめい』が『おうけん』に聞こえました」
「×ページのハンネローレ。『いい』ではなく『よい』に脚本を修正してください」
細かい部分を修正したら前編のエピローグです。