STORY02

特別対談
淡海乃海 水面が揺れる時

小説の世界からメディアミックスへ──いざ、出陣!
書籍編集×コミックス編集×原作者で語る作品づくりの軌跡を語ってもらいました。

― メディアミックスへ、いざ出陣!

D.S:おかげさまでコミックスも好調ですね。こう言ってはなんですが普通の作品よりかなりカロリーがかかる作品かと思います。S.Tさんへもコミカライズ担当のもとむらさん、藤科さんへも頭が上がりません。

S.T:そうですね。史実との考証や検証だったり、多彩な人物の描き分けだったり、求められるポイントは正直多いです。なので、必然的に作家さんも絞られてくる。作家さんとのご縁は巡り合わせなので、運が良かったなとも思います。

D.S:しかもお二人とも愛が深い、というのも嬉しい限りです。毎話、楽しんで描いてくれているんだなとわかるので、チェックするのが楽しみです。

イスラーフィール:僕は文字でしか世界観を表現できないので、あまりビジュアル化した時のことを考えないことも多いんです。上がってきた原稿を見て、表現の高さに衝撃を受けることもある。たった一行に対してここまで深掘りしてくれているのかとありがたい気持ちになります。

S.T:そう言ってくれますと本当に嬉しいですね。コミックス担当としては作家さんと相談しつつ、原作のどこを膨らませるか?行間を深掘りするか?考えつつ、絵で見せられる部分はコンパクトに進められるように意識しています。

D.S:コミカライズになって特にですけど、基綱の悪い顔がみんな好きですよね。

イスラーフィール:そうですね、悪巧みというわけでもないんですけど、強かさが行き過ぎるとそういう顔になりますね(笑)。

S.T:とっても好評です。弊社のコミカライズはどこの電子書店でも1話無料で読めるようにしているんですけど、淡海乃海だけは2話無料なんです。悪い顔が出てくるところまで見せたいから(笑)。

D.S:それでだったんですね(笑)。
ちなみにコミックスをはじめ、ドラマCDや舞台の脚本でもあまり表現的なNGが入ることってあまりないですよね。

S.T:たしかに珍しいなと思います。

イスラーフィール:そうですね。僕は表現者の意向を大事にしたいなと思っています。もちろん明らかに原作の意図にそぐわないようであれば修正をお願いすることもあるかもしれませんが、今のところそれはないですね。
僕の作った世界観もコミックスが作った世界観も、ドラマCDや舞台の脚本も違った味がある。
オリジナルのキャラクターや描写に僕が感銘を受けることもあります。

D.S:SSなどへキャラクターを逆輸入してもらったこともありますよね。

イスラーフィール:正しくそうです。それだけ認めているということです。なので、原作をお渡ししたならば、あとは自由にやってくださいというスタンスですね。

D.S:SSといえば、イスラさんにはいつもたくさんのSSを書いていただいております。書籍、コミックス、特典各種、淡海乃海の商品にはほぼ全て付いています。どんどん増えてしまって申し訳ない限りでもありますが、本当にありがとうございます。

イスラーフィール:いえいえ、むしろ僕が書きたくて書いていますから。web版から始まり、書籍でも加筆していますが、書き足りないんですよね。あれも書きたかった、これも書きたかったと次々に浮かんできてしまい(笑)。特にコミカライズや舞台用のSSでは書籍で書き損ねた話を拾うことができるのでとてもありがたいです。

D.S:そう言っていただけるとこちらもありがたいです。おかげさまでどのSSも好評ですね。
念願の外伝集も発売できました。

イスラーフィール:ずっと発売して欲しいと声があったんですよね。ようやく発売に漕ぎ着けられて本当に良かったです。

S.T:僕も全て読ませていただきました。どれも最高!一番は決められないです(笑)。

― 編集者について

D.S:今までお仕事を一緒にしてきて、僕とS.Tさん、編集者それぞれの印象などありますでしょうか?

イスラーフィール:D.Sさんには特にデビューからお世話になっていることもあり、本作りを一から教えてくれた人でしょうか。僕は描くのが好きなだけで何もわからないですから、手取り足取りD.Sさんに導いてもらった印象です。やりづらかったと思うんですよね。僕の方がずっと歳上ですから。
それでもシリーズを立ち上げて、ここまで盛り上げてくれたのはひとえにD.Sさんのおかげだと感謝しています。

D.S:やりづらかったとかは全くないです(笑)。イスラさんは丁寧で気さくな方なので、むしろ気楽に相談しやすくていつも助かっています。
自分で言うのもなんですが、僕とイスラさんはお互い無い物を補いあえている関係だなと常々思っています。
僕はイスラさんに比べると史実への理解は及ばないですが、その分、読者の視点に立った提案ができていたのではと思います。先の話にも出た本造りの知識やビジュアルへの意識ももちろんですね。その意味で幅広い読者へ届けることが出来たのではと考えています。
S.Tさんについてはどうでしょう?

イスラーフィール:当初は特に付き合いはなかったですが、コミカライズが始動するにあたって必然的にお話する機会は増えましたよね。作品へまっすぐ向き合ってくれる情熱的な人という印象でしょうか。
漫画家さんとの板挟みの中、いつも素敵な原稿を作ってくれて嬉しく思っています。

S.T:その意味で淡海乃海のチームは各々に壁もなく、風通しがいいですね。原作、コミックス間で常に忌憚なく意見を交わし合っていますよね。

D.S:ですね。これからも引き続き書籍の刊行をはじめ、メディアミックスやグッズも続々製作予定ですので密に情報交換していきましょう。

イスラーフィール:そうですね、今後ともよろしくお願いします。

※インタビューは2022年4月現在の情報です。