STORY04

ティアムーン帝国物語

やりたい企画が盛り沢山! 無我夢中に突き進む!
コミカライズに舞台化、グッズ展開などなど盛り沢山!
担当編集×原作者に書籍化の経緯や日々の作品作りについて教えてもらいました。

ティアムーン帝国物語

2019年TOブックスにより書籍化。現在原作小説1〜9巻、コミックス1巻〜4巻を発売中の、保身上等!自己中最強!小心者の元(?)ポンコツ姫が前世の記憶を使って運命に抗う、一世一代の歴史改変ファンタジー!『このライトノベルがすごい!2021』 (宝島社刊)の単行本ランキングでTOP10にランクイン、2度の舞台化をし、早くもシリーズ累計65万部(電子書籍含む)を突破する話題沸騰中の作品である。

― 「ティアムーン帝国物語」はどんなお話ですか?

M.F:断頭台に送られて20歳で命を落とした王女が、12歳に戻って断頭台から回避するために頑張るというお話です。書籍では「歴史改変ファンタジー」と謳っています。一度目の人生で出来なかったことを、時間を戻してトライしていくループものです。周りとの関係性を作り、王女として国の財政や大飢饉を回避していく中で、他国の問題をも解決していきます。

― 本作の魅力を教えてください!

M.F:とにかく、主人公のミーアが本当に可愛いです!

餅月:ちょっぴり図々しくてわがままなんだけど、(ミーアが)実は小心者なところとかですね(笑)。

M.F:ナチュラルに欲張りなところが良い。でも義理に厚くて、王女という立場から決して逃げず、結果的にみんなを救っていくところが好きです。最初から、こういうキャラクターにする意図があったんですか?

餅月:あまり立派なことをして読者から嫌われないように、とは思っていました。あと、共感しやすいように植物的というか本能的な欲望に左右されるキャラクターにしていますね。
最近、食いしん坊属性も付きましたね(笑)。

M.F:とりわけキノコが好きですよね(笑)。そこも含めて、とっても身近で庶民的ですよね。

餅月:そうですね。それでいて彼女はいい人なんですね。ちゃんと自分の欲求なり、小心者的な目標があって良いことをする。そういうふうに作っていますね。

M.F:ティアムーンはとても構成がしっかりとしていて、帰納法的に物語が作られているように感じるのですが、キャラクターや設定自体も分析して作っていったものなんでしょうか?

餅月:そうですね。当時、悪役令嬢ものが「小説家になろう」で流行っていたんです。今も流行っていますが、当時から流行っていて『ティアムーン』も悪役令嬢ものの派生パターンとして作りましたね。
悪役令嬢もので当時流行っていたのが、ゲームの世界に入っていって「破滅する役割のキャラクターだから破滅しないように頑張る」っていう話だったり、マンガの世界に入り込んでいったりする話でした。『ティアムーン』では、「マンガとして知っている世界にいく」っていう部分を、「実際に自分が経験した未来からやり直す」という方法に置き換えています。
「換骨奪胎」という言葉が適切でしょうか。既存の売れている作品をみて面白さのエッセンスはこうかな?と当てはめて作った感じですね。

M.F:そうなんです。すごく分かりやすい話型を踏まえて書かれているので感情移入がしやすいんですけど、そこに餅月さんの宗教観みたいのがすごく入っていて……。クリスチャンで毎週日曜日に礼拝に通われている餅月さんらしい価値観や芯のぶれなさと、即物的な主人公とのギャップが他の作品にはないものだと感じます。

餅月:ちなみに小ネタとかで昔、宣教師から聞いた話をちょろっと入れたりしています(笑)。名前の付け方とかは聖書由来でというのがちょいちょいあったり。

M.F:敵である「混沌の蛇」も、たしかに「蛇」ですよね……!あと、道徳観とか価値観とかの骨子が、誰もが共感してしまうものになっている。海外でも翻訳が進んでいるんですが、そちらでもどんどん重版がかかっているんです。

― 書籍化の経緯を教えてください。

M.F:「小説家になろう」(投稿サイト)のランキングに出て来た日に読んで企画を通して、その週明けぐらいに打診してましたね。あっという間のスピード感だったと思います。毎日毎日ずっと読んでいてすごく面白くて、日々『ティア』のことしか考えてませんでした(笑)。
それでお声掛けをして、すぐお会いできるようになって。ちょうど渋谷に講師にいらしていたので会社に来て頂きました。めちゃめちゃ緊張した記憶があります。

餅月:私もその時めちゃめちゃ緊張しました。

M.F:餅月さん、スーツでしたよね。編集長が同席する予定が体調不良で欠席したので、二人でお話させて頂いて。その時はもうGilseさんはイラスト候補に出させて頂いてましたね。うちの「夜伽の国の月光姫」がお好きでお読みになっていて、同系統のイラストのテイストで売りたいですね、というお話をした記憶があります。
聞いたことなかったんですけど、他社からも同タイミングでお声掛けあったんですか?

餅月:実は少しあとにあったんですよ。ただ、知り合いも実はTOブックスさんで書籍化していまして。その方からの評判と、編集M.Fさんの熱意とで決めました。

M.F:そうだったんですね……!やっぱり作品を一緒に作りましょうと同意に至るまでが一番ドキドキします。どんな人なんだろうって。でも私は作品を好きになってからお声掛けするので、著者さんも必ず好きになりますね。あまりイメージはズレないです(笑)。
それでもやっぱり緊張しました。あと他社さんと競合しているだろうなと気が気じゃなくて、そっちの意味でも。あと完結が匂っていたので、そこもですね。

餅月:実際、完結させるつもりだったんですけどね。

M.F:ですよね?ダメですダメです、と言い続けたような……というか、今も言っていますね(笑)。2巻で完結してしまう形だったので、最初の打ち合わせで、この後のプロットを考えましょうって、これからお話どうやって展開していくのかお伺いしたり……そのあとすぐにプロット頂いて拝見して。それからは各部ごとにプロットを頂いて、書いていただいてますね。絶対にシリーズとして2巻以降も出したかったので、必死でした(笑)。

餅月:シリーズが続くと、盛り上がり方も変わってくるんですか?

M.F:そうですね。告知とメディアミックスの関係が大きいでしょうか。3、4巻のタイミングでコミカライズの連載が始まり、5、6巻の同タイミングで舞台化がありましたね。単巻や巻数が短い作品だと、どうしても忘れられていってしまいがちなんです。日々、新しい作品がいっぱい生まれているからですね。続刊を出せていると、定期的に読者さんたちへPRして心に刻まれますので、その懸念は少ないです。なので、年3冊から4冊は出せるようにと当初から考えていました。実際、初めて重版がかかったのも3巻を越えてからでしたね。

餅月:続いていくにつれて、読者さんたちが信頼してくれるというのもありますね。

M.F:そうですね。ちゃんと続いてくれるシリーズなのか身構えている人も多い印象です。あとは口コミ効果もそうですね。こんなに続いているなら手を出そうという人が増えてきて、そこでコミックスにハマった人が原作を読んでハマって、という流れがあると思います。舞台化もそうです。

餅月:ラノベの舞台化はレアですよね。珍しいなと思います。

M.F:メディア化の順番としては、だいぶレアですよね(笑)。

餅月:オリンピック直前のすごいときにやりましたね。

M.F:早いもので、、第二弾も無事に幕を閉じることができました。読者さんを広げていくためにどんどん手を打っています。電子書籍との相性もすごくいいんですよね。コロナの影響もあったかもしれないですが、紙の書籍と比べると倍近く伸びています。

餅月:シリーズもいよいよ累計65万部ですね。

M.F:シリーズ毎に伸びているのは、面白いと思って続きも買ってくださったり、感想を広めてくださったりする読者さんが増えているということ。自信を持って、このままミーアをビッグウェーブに乗せて行きたいですね!

餅月:そう思います……!