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香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD7アフレコレポート【中編】

香月美夜「本好きの下剋上」ドラマCD7
アフレコレポート【中編】

【前 編】【中 編】【後 編】

二日目は井口裕香さん、速水奨さん、関俊彦さん、小西克幸さんです。

○井口裕香さん&速水奨さん(後編)

本日、ローゼマイン役の井口裕香さんとフェルディナンド役の速水奨さんは後編のアフレコです。
最初はフェルディナンドの出番がないので、ローゼマインのセリフをどんどん録っていきます。タイトルコールには忘れずに「後編」を入れました。

「△ページ、『開(あ)いた』ではなく、『(ひら)いた』でお願いします」
「○ページ、強すぎというか、感情的過ぎです。もうちょっと冷静に……というか、冷たく切り捨てる感じにしてください」
「×ページ、『それから』を削除してもらって良いですか?」

救出のシーンから速水さんも入ります。それにしても、前回に引き続き死にかけのフェルディナンドがすごい。だんだんと回復していく様子もよくわかります。

「苦しい呼吸を長めにください」
「×ページ、モノローグの途中でリアクションを入れた方が良いのでは?」
「△ページのフェルディナンド、『止(と)めろ』ではなく、『(や)めろ』と読んでください」
「○ページのローゼマイン、最後を伸ばさないで短くしてください」
「×ページ、『それ』ではなく『その首飾り』に修正してもらって良いですか?」

救出のシーンは必聴ですね。
個別の収録ではなく、二人の掛け合いで聞けて良かったです。
ランツェナーヴェとの戦いでも二人の会話は続きます。
でも、さすがに慣れた二人です。予定より早く終わりました。

「お疲れ様でした」

休憩時間に入るとすぐに私は鈴華さんに向かって呼びかけます。

「鈴華さん、鈴華さん。ちょっとお伺いしたいんですけど、エーファとトゥーリ、どっちが良いですか?」
「ちょっと待ってください。何の話ですか?」
「エーファ視点とトゥーリ視点、どっちが好きですか?」
「全く説明が足りてませんよ。何を書くんですか?」

……あれ? めちゃくちゃ警戒されてない?

「今ね、エーレンフェスト防衛戦の書き下ろし中なんですが、エーファ視点とトゥーリ視点、どっちが読みたいですか? 軽い気持ちで答えてくれたら……」
「責任重大じゃないですか。簡単になんて選べませんよ」

あみだくじでもよかったのですが、せっかくだし鈴華さんに聞いてみようと軽い気持ちで質問したら、鈴華さんがマジ真剣に悩み始めました。

「本当にどっちでも良いんですって。下町側の避難の様子、図書館での様子、ダームエルに托すお守りって要素を入れたいのでどっちでも大丈夫なんです。鈴華さんの好みを聞かせてください」
「うーん……。その要素だったらエーファですね。親子、夫婦という関係から見えるものの方が気になります。トゥーリは書き下ろし短編が多いせいもあって何となく想像がつくので」

真面目に考えてくださった鈴華さんのおかげで、エーファ視点に決まりました。ちなみに、「こんな感じで鈴華さんに選んでもらったんだ」と子供に報告したらものすごく不安そうな顔をされました。

「お母さん、あんまり鈴華さんに迷惑かけたら駄目だよ」
「……はい」

○関俊彦さん

関俊彦さんはユストクス役とハイスヒッツェ役を演じてくださいます。

まずはユストクス。
以前に収録した声を確認してから開始です。

「○ページ、嫌みっぽさが強いのでもう少し普通にしてください」
「×ページの『レティーツィア様!?』はもっと上げる感じにしてください」

いくつかの修正はありますが、さくさく進んでいきます。
ユストクスは側仕え&文官でよく喋るので、エックハルトと違って結構セリフが多いなと感じました。

次はハイスヒッツェ。
ダンケルフェルガーの騎士です。

「○ページのハイスヒッツェはもうちょっと暑苦しい感じが良いと思います」
「暑苦しい?」
「熱血というか、ダンケルフェルガーらしい熱量が足りません」

音響監督さん達に笑われましたが、ダンケルフェルガーには暑苦しさが大事なんですよ。
お願いしたらすぐに熱が加わりました。

収録中に関さんから質問がありました。
「すみません。×ページのセリフですが、物足りないというのはどういう意味でしょう?」
「敵が相手として不足しているという意味です。戦いを楽しみに来たのに弱すぎるって感じでお願いします」

今回の収録ではフリュートレーネが言い難そうでした。それから、初めて出てくる神様なのでシュネーアストの発音をチェックしました。

最後にモブ役です。
漁師やランツェナーヴェの兵士などにご協力いただきました。本当に声優さんって色々な声が出るものだと感心してしまいます。

○小西克幸さん

小西克幸さんはエアヴェルミーン役、ゼルギウス役を演じてくださいました。初参加のキャストです。地の声とエアヴェルミーンとゼルギウスの声が完全に別人に聞こえました。

まずはエアヴェルミーンです。初めてなので、キャラの声を作るところから始めるわけですが、そこであった質問。

「エアヴェルミーンってどんなキャラですか? キャラの見た目とかわかるものってありますか?」
「PCにあります」

担当さんが急いでPCを持って行き、エアヴェルミーンの設定やイラストを見せます。

「香月さん、エアヴェルミーンってどういうキャラだと説明すれば良いですか?」
「まぁ、神様みたいなものですよね」
「神様!? 元人間が神様になったとか、そういう……?」
「いいえ。元神様で、今はそれに準ずる存在です。人間ではありません」
「……人間ではない」

そんなこんなで、テストの結果。

「途中から後半はいいですね。最初の方は人間すぎる感じがします。もうちょっと神様感が欲しいです。うーん、抑揚とかが違うのかなぁ?」
「人間すぎるって……人間だからな。 (笑)」

音響監督さんは苦笑しつつ、「途中からの言い方に合わせる感じでしてみてもらえる?」と小西さんに指示を出します。それを聞いた小西さんが少し考えて質問しました。

「もっとどっしりした感じか、それとも、線の細い感じにした方が良いのか……」
「細い方でお願いします」

修正した結果、良い感じの声ができました。声ができると、収録自体はあっさり終わりました。

次はゼルギウスです。ゼルギウスはアーレンスバッハの上級貴族でフェルディナンドの側仕えです。

「こちらはイラストもないので、お任せです。二十代半ば~後半くらいの声であればOKです」

側仕えという役から考えると少しいかつい声だと思いましたが、線が細い感じの温和な声にするとエアヴェルミーンに寄るし、そんなにセリフも多くないので、丁度良いのかもしれません。

あとはモブ役にも協力いただきました。
レティーツィアの護衛騎士です。
さくっと終了しました。

二日目はこれで終了です。

三日目は上田燿司さん、渡辺明乃さん、石見舞菜香さんです。

○上田燿司さん

上田燿司さんは初参加。アウブ・ダンケルフェルガー役、シュトラール役、金色シュミル役を担当してくださいます。

まずは金色シュミルから始まりました。

「先生、どうですか?」
「うーん、無機質すぎますね。図書館シュミルズと違って金色シュミルは流暢に喋るので、もう少し普通にしてもらっていいですか?」

修正していただいたら。すぐにOK。流暢に喋るけれど感情がないというか、淡々とした感じに仕上がりました。
声ができれば特に何も言うことなし。あっさり収録は終わります。

次はアウブ・ダンケルフェルガーです。
こちらは私が最初に指示を出しました。

「アウブ・ダンケルフェルガーはごつめの声でお願いします」
「あ、はい」

一発OKでした。特に後半がいいですね。アウブ・ダンケルフェルガーって感じがとてもします。

それから、シュトラール役です。シュトラールはアーレンスバッハの元騎士団長で、フェルディナンドの護衛騎士です。
アウブ・ダンケルフェルガーとイメージがかぶるのを避けた結果、騎士の割に結構優しげな声になりました。

「○ページ、最初はもう少し落ち着いた感じで、段々と焦りが出てくる感じにしてください」
「×ページ、落ち着いて報告するイメージでお願いします」

いくつかの修正はありましたが、すぐに終わり。
その後、上田さんにはダンケルフェルガーの騎士やランツェナーヴェの兵士などのモブの役も協力していただき、「若めの声で」とお願いしました。

○渡辺明乃さん&石見舞菜香さん

二人で収録です。渡辺明乃さんがヒルシュール役、フラウレルム役で、石見舞菜香さんがリーゼレータ役、ヴァイス役を演じてくださいます。

まず、リーゼレータとヒルシュールから。以前に収録した声を聞いてから始めます。

「○ページ、最奥(さいおく)でお願いします」
「×ページ、もう少し窘める感じにしてください」

次はヴァイスとフラウレルムです。
「んまぁ!」が絶好調。(笑)

二人とも上手いし、セリフ数が多くないのですぐに終わるんですよね。
何というか、いつも書くことがなくて困る感じです。
予定時間より早くに終了。これで三日目も終わりました。

そういえば、リーゼレータも成人したし、以前の声と合わせるのではなく少し年齢を上げる感じで調整してもらってもよかったかも? とアフレコレポを書きながら思いました。思いつくのが遅すぎました。ハンネローレやシャルロッテも声の年齢を上げた方が良いかもしれません。次回、覚えていたら提案してみましょう。

四日目、最終日は内田雄馬さん、山下誠一郎さん、中島愛さん、寺崎裕香さん、小林祐介さん、諸星すみれさん、森川智之さん、本渡楓さん、長縄まりあさん、潘めぐみさん、岡井カツノリさんです。

○内田雄馬さん&山下誠一郎さん

内田雄馬さんがハルトムート役、レオンツィオ役、レスティラウト役。
山下誠一郎さんがコルネリウス役です。

まずはレオンツィオ。
ハルトムートのセリフは後編の方が多いので、後回し。前編にしか出番のないレオンツィオから収録が始まりました。レオンツィオはランツェナーヴェの者で、ディートリンデを唆し、十歳になったばかりのレティーツィアを陥れる悪い男です。
以前に収録した声を聞いて始めます。

「うーん、ちょっと言い回しが嫌らしいですね。子供相手ですし、嫌らしさは必要ないです。最初は優しい感じで、後のセリフは嘲笑を交えたような冷たい感じでお願いできますか?」

色気が前面に出た悪い男すぎたので、少し修正してもらいました。ディートリンデ相手ならばそれで良いんですよ。前回の収録の雰囲気を完全につかんでいるという意味では完璧なのですが、レティーツィア相手にはちょっと、ね。(笑)

次はレスティラウトです。
一言しかないのですぐに終わりました。

それから、ハルトムートとコルネリウスです。
失踪したローゼマインについて報告をするハルトムートの陶酔がすごい。音響監督さんが「先生、コレで本当に大丈夫? 嫌らしすぎない?」と心配するほど。

「あ、OKです。問題ありません」
「いいんだ?」

いいんです、ハルトムートはこれで。

二人にとって一番大変な収録は冬を呼ぶ祝詞でした。
マティアス役の梅原裕一郎さんが先に収録している祝詞にぴったり合わせる必要があるからです。
「せーの」からセリフを始めるタイミングが梅原さんと二人でズレるので、「せーの」のタイミングを調整したり、神の名前の発音や息継ぎのタイミングが微妙に違ったり……。先にあるものに後から複数人で合わせるのは大変だなと思いました。

コルネリウスのセリフはエックハルトと聞きたかったですね。収録の難易度としては祝詞の方が圧倒的に難しいので、ハルトムートとコルネリウスを一緒に録る方が良いと私も思うんですよ。でも、コルネリウスはエックハルトとの会話が面白いので掛け合いを聞きたいと思いました。完成品が早く届いてほしいです。

「監督、前編の○ページに側近のセリフとアドリブがありますよ。コルネリウスとハルトムートが名指しで入ってます」
「え?……あぁ、これか」

脚本を見直すと、『側近達「はっ!」』の横に注釈でコルネリウス、ハルトムート、リーゼレータと書かれています。

「あの、前編の台本をもらっていません」

山下さんが困ったように言いました。脚本のキャラ名が「コルネリウス」ではなく「側近」なので、コルネリウスのセリフにカウントされなかったせいでしょう。

「大したセリフはないし、見せてあげて」

音響監督さんの指示で、内田さんが山下さんに台本を見せてあげたようです。「なんか、教科書を忘れて見せてもらう学生みたいだな」という声が聞こえていました。リモート参加の私にはそういう面白いやり取りが見えないので、リモートアフレコはダメだと思いました。

最後に二人にはモブも協力いただきました。
ダンケルフェルガーの騎士、ランツェナーヴェの兵士、漁師、男1など、あちらこちらに二人の声が潜んでいます。全部聞き分けられる方っているのでしょうか?
私は無理です。

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