「本好きの下剋上」ドラマCDアフレコレポート【中 編】(18.3.15更新)

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無茶ぶりの指示を終えると、収録の開始です。フラン役の伊達忠智さんとローゼマイン役の沢城みゆきさんがマイクの前に立ちました。今回のフランはプランタン商会を案内する一言だけ。その後はローゼマインの一人芝居です。ベンノにグリグリされて嘆くところを一人で演じています。その後はルッツに泣きつく演技。

音響監督さん「最後の泣き、もう少し足してください」
沢城さん「わかりました。……う~、ルッツ~……(ここからしばらく泣く)」

この切り替えがね、本当にすごいですから。別々に収録しているなんて、絶対にわからないと思います。

城のシーンは文官の声で始まるのですが、この文官はマルク役の菊地達弘さんが演じてくださいました。ダームエル役の田丸篤志さんやコルネリウス役の依田菜津さんも登場です。
今回はダームエルの台詞が本当に一言、二言しかなくて、ちょっと申し訳ない気分になりました。ダームエルは貴族院には行けない成人の護衛騎士なので仕方がないんですけれど……。コルネリウスはちょっと成長した感じの声ということで依田さんが頑張ってくれています。

沢城さん「ここの台詞、前に何か一言入れないとアンゲリカのことを完全に無視しているように聞こえませんか?」

その指摘に操作室内は台本を読んで納得。どのようにアンゲリカの台詞を受けて、次の台詞に繋げるのか考えます。

國澤さん「それはよかったですねとか、安心しましたという一言を入れますか?」
私「そこまでハッキリ受けないで、そうですか……って感じで軽く流したいです。感情的によかったとか安心したより、ちょっと呆れてるが強い雰囲気で……」
國澤さん「では、苦笑してコルネリウスに向き直る感じはどうでしょう?」
私「あ、その方が良いですね」

音響監督さんからブースの沢城さんに伝えてもらい、収録し直していきます。うん、こっちの方が良いですね。

ローゼマイン役の沢城さんとフェルディナンド役の櫻井孝宏さんの掛け合いは前回と同じく聴いていてとても楽しいです。

プロデューサーさん「先程の台詞、がぶり気味でしたが……」
私「特に問題ないです。勢いのある方がローゼマインの必死さが出て良いと思います」

貴族院へ行ってからのシーンに出てくるのはヒルシュールです。新しいキャストである田中敦子さんが演じてくださいます。決定した時にどんな方なのか調べたのですが、顔写真を見て雰囲気が似ているなぁ、と思いました。何というか、きびきびしてそうというか、できる人って感じ?

プロデューサーさん「どうですか?」
私「え? 私はそれほど違和感ないですけれど……」
國澤さん「もう少し歳を上げてもらった方が良いと思いますよ」

結構微妙な差なので、もうちょっと歳を上げた方が良いかどうかテストの声を聴いて判断することが私にはよくわかりません。変えてもらうとしっくりするので、國澤さんの方が正しいんだなぁと思うのですが。

ヒルシュールが結構かっちりしたできる先生っぽい雰囲気で、もうちょっと茶目っ気があってもいいかな? と途中で思いました。でも、よく考えるとエーレンフェストへの報告がほとんどなので、この時期のヒルシュールがエーレンフェストに向けて茶目っ気を出すのも変なんですよね。

そんなヒルシュールの報告を持ってくる文官はマルク役の菊地さんです。その報告に頭を抱える保護者三人組……のはずなのですが、今回はフェルディナンド役の櫻井さんとカルステッド役の浜田賢二さんの二人だけ。ジルヴェスター役の鳥海浩輔さんは終盤戦で別に収録するのです。

鈴華さん「うぅ、ここは三人揃ってほしかったですよね」
私「ですね。三人の掛け合いは完成までお預けかぁ……」

二人揃ってしょんぼりへにょんになってしまうくらい、カルステッドとフェルディナンドのやり取りがイイ感じです。頭の中に絵が浮かぶので、ジルヴェスターにも入ってほしくて仕方がありませんでした。

報告の間に貴族院の方々の声が挟まるのですが、コルネリウス役の依田奈津さんがブリュンヒルデ役、フロレンツィア役の長谷川暖さんがフラウレルム、フラン役の伊達忠智さんがルーフェンをしてくださいました。たった一言ですが、それぞれのキャラがよく出た台詞です。思わず笑ってしまいます。

ソランジュはフロレンツィア役の長谷川暖さんが兼ね役で演じてくださいました。台詞がいくつかあるので声を作りましたが、少し苦労した感じでしたね。テストの声がイメージ的にヒルシュールと近いというか、結構押しが強いキビキビした感じの声でした。

音響監督さん「どうですか?」
私「もっと柔らかい感じで……」
國澤さん「年齢をあげてください」
鈴華さん「ソランジュ先生はおっとりした感じですよね?」

おっとりおばあちゃんに近付けるのに何度か修正してもらいましたが、ソランジュの声ができました。

貴族院のやり取りの中ではローゼマイン、コルネリウス、アンゲリカ、ヴィルフリートのやり取りも聴いていて楽しいのですが、アンゲリカとヴィルフリートがいないので飛び飛びです。
ローゼマインが保護者三人から受ける尋問会でもジルヴェスターが不在のままに進みます。やり取りが軽快で面白いだけに、穴があるのが惜しい。全部揃った声が聴きたいです。

その後は孤児院長室で下町の面々とのやり取りになりました。ベンノはすでに収録を終えているので、ローゼマイン、オットー、グスタフの三人の掛け合いです。オットー役は新キャストである浜田洋平さん、グスタフ役はフラン役の伊達忠智さんです。まずは、二人の声作りからです。

音響監督さん「オットー役はどうでしょう?」
國澤さん「もうちょっと年齢を上げてもらった方が……」
私「もうちょっと爽やかな感じにしてほしいです」
鈴華さん「わかります。もうちょっと軽い感じですよね?」

何度かのやり取りの後、最終的には「爽やかで明るい雰囲気の腹黒商人」という指示になりました。

プロデューサーさん「グスタフはどうですか?」
私と鈴華さん「前神殿長にしか聞こえません」
音響監督さん「どちらも同じくらいの年齢の男性ですからね」

それで音響監督さんが「ちょっと声を変えてください」と指示を出すと、少し違う初老の声になりました。毎回、伊達さんには驚かされますね。

國澤さん「ちょっと若々しくないですか?」
私「前神殿長と違って、現役で仕事をしているギルド長なので問題ないと思います」

そんな感じで声ができたら収録です。伊達さんは今回フラン役よりグスタフ役の方が断然台詞が多かったですね。原作にはあるけれど、今回のドラマCDの範囲のフランの見せ場はユストクスに食われちゃったから……。



神殿での会話を終えると、一旦休憩時間です。お昼ご飯を食べたり、トイレに行ったりします。実は、この時しか休憩時間はありません。基本的に私達は操作室、声優さん達はブースに籠りっきりで延々収録をするのです。

休憩の時間、お手洗いに行ったところでコルネリウス役の依田さんと少しお話をしました。前回のアフレコレポ読んでくださったようです。兼ね役についても書かれていたことが非常に嬉しかったと言ってくれました。私はそういう感想をいただけることが嬉しいです。

普通はアフレコレポに兼ね役の情報を書かないようですね。プロデューサーさんや音響監督さんにも「そんなところまで書くんですか!?」と驚かれました。でも、せっかく演じてくださっていますし、役によっては本役より台詞が多いですから書いて感謝を伝えたいと思うのです。……伝わっているといいのですが。

お手洗いの帰りに声優さん達がいるブースをちょっと覗いてみました。入口近くにいるフロレンツィア役の長谷川さんはTwitterで相互フォロー状態なので挨拶したいなと思ったのですが、台本を真剣に見ていらっしゃるので遠慮しました。
他は手早く昼食を摂っていらっしゃる方やお手洗いに立っている方、台本を真剣に見ていらっしゃる方という感じでしょうか。

そういえば、カルステッド役の浜田賢二さんは入れ替わりでバタバタしている時間帯だったと思うのですが、「すみません。ちょっとよろしいですか?……ここの台詞ですが……」と申し訳なさそうに声をかけてくださいました。言い回しに関する質問でしたが、声優として「こう変更した方が良いと思う」という意見や質問があったら遠慮なくバーンと来てください。音として聴いた響きの良さなどは、声優さん達の方が絶対に詳しいと思うので。



休憩が終わったら、別のお仕事がある方を優先して収録するためにオットー一人のシーンを後回しにしてどんどん収録していくことになりました。

文官1の役はカルステッド役の浜田賢二さんです。平民を下に見ている貴族らしい文官を演じてくださいました。同じようにジルヴェスターとの会話なのに、全く違う印象ですよね。

そういえば、その文官とのやり取りの中、沢城さんが「技術料」という単語に苦戦していました。何か別の言葉に置き換えられないか考えましたが、咄嗟にいい言葉が浮かばず、悩んでいる間に収録が終わりました。
うぅ、私の語彙力……。

場面が変わって、新しい声作りです。ユストクス役の間島淳司さん。

音響監督さん「どうですか?」
國澤さん「もっとおちゃらけた感じが欲しいです。ノリが軽いというか……」
音響監督さん「どうでしょう?」
私「う~ん……。軽すぎるというか、ちょっとふざけすぎているというか……。ユストクスは飄々とした印象なんですけれど、貴族らしさも必要なんですよね」

本当にユストクスは難しい役だと思うのです。貴族らしさは忘れず、飄々とした印象で色々な物を面白がっているけれど、締めるところは締める有能キャラ。ついでに、女装して情報収集をする変人。

私「あ、こんな感じ。近くなってきました」
國澤さん「キャラの言動はともかく、年齢は高めですよね。少し年齢を上げてみてください」

多分、私と國澤さんのユストクス役に対するイメージに少し差があり、それぞれの要求が違っていたことが原因で、声を作る間島さんは非常に大変だったと思います。
でも、ユストクスの声ができてよかった。間島淳司さんの高笑いもリヒャルダに注意されて軽く流すところも楽しかったです。

フロレンツィア役の長谷川暖さんは前回も参加されているので、特に問題なくフロレンツィア役を演じてくださいました。子供を心配する声がとてもいい感じでしたよ。

最後に声を作ったのがマルク役の菊地達弘さんです。テストでは結構ハキハキとした商人のおじさんという感じの声でした。

私「違います。マルクさんはもっと素敵紳士なんです」
國澤さん「常に控えめというか、従者らしい雰囲気をお願いします」
鈴華さん「物腰の柔らかさとか、優しさがいりますよね?」
私「そうです。素敵紳士な品の良さを感じさせてください」

マルクが素敵紳士であることをいっぱい主張したのですが、音響監督さんがブースに通したのは國澤さんと鈴華さんの要求でした。素敵紳士はとても重要な言葉なのに、解せぬ。

そして、ドラマCDクライマックスのシーンに。ローゼマイン、ベンノ、ルッツ、マルクの会話からローゼマインとルッツの回想を含むやり取りに流れていきます。もう絶対に涙なしでは聴けませんよ。回想中のマインの幼い声がマジプリティとか考えている場合ではありません。

どうしてここにいないの、ルッツー!!

もうね、本当に叫びたくなりました。めちゃくちゃ良いシーンなのに、ローゼマインとルッツが揃わなくて一人ずつの収録なんですよ。完成品、完成品を早くっ!
アフレコに行ってこんなに飢えた気分になるとは収録開始の時点では想像もしていませんでしたね。ちなみに、このアフレコレポを書いている今も飢えています。ぐるるるる……。

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